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reproductionが行なわれなくなった日本

depressionといえば、テレンバッハという精神病理学者が唱えたティープス・メランコリクス(メランコリー型とかメランコリー親和型と訳されています)という類型にあてはまる方、仕事熱心で責任感が強く協調性を尊び、年齢でいうと中年以降、大企業では中間管理職クラスの方で、たとえば仕事ぶりが評価されて昇格するといった状況因が加わり、さらなる責任を背負いこみ、あるいはそのように先取りすることにより、Schuld(負い目、借金、罪といった語義があります)にとらわれつつ発病するといったケースを中核に据えて考えてゆくことが多かったのですが、最近の日本のdepressionは、ひとことで言うと、人を選ばなくなってきています。
とくに以前はあまり見られなかった働く若い女性の患者さんが急増しています。男女雇用機会均等法の施行に呼応した女性の保護規定の撤廃、変形労働、 裁量労働制の導入、労働者派遣法の相次ぐ改正によるこの法の適用されるセクターの拡大等々により、男性に劣らず勤労女性の労働条件はますます過酷なものとなりつつあります。 ?労働価値説には異論があるとしても、ロボットが人間の行なってきたあらゆる作業を一手に引きうけてくれるようになる技術革新でもなされないかぎり、人間のExistenzの再生産(=繰り返し維持されること)、さらには社会システムの再生産のためには、労働が必要でしょうし、労働(力)の再生産がなされなければなりません。『資本論』の時代の英国でも、健康な成人男子はたとえば朝、定刻に起床し、朝食を取り、工場に出かけ、過酷な労働条件のもとで長時間働き、ぐったり疲れて帰宅(プロレタリアートである以上家はかれの資産ではなかったのでしょうが)するが、そこには家族団欒があったでしょうし、少なくともそこそこの栄養補給と睡眠により、翌朝は復活して工場に出かけ……といった再生産がなされていたはずです。また、労働者の子供も成長して父親を引き継ぐかたちで労働者になり、いわば世代を超えて再生産は行なわれていたといえます。
ところで、reproductionは生殖という語義をももっています。「日本において、reproductionが行なわれなくなった」という言辞は両義的なのです。ontogeneticなレベルで過労により勤労の再生産が出来なくなった人間(もちろん男女とも)にとっては同様にセックスをする余力もありません。phylogeneticなレベルレヴェルにおける事実、少子化の事実も符合しているではありませんか。(H.12.9.21)


 

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