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「パニック発作について(パニック障害とは?)」

パニック発作という呼び方は1980年代から主として米国において、DSMの分類とともに流行となった呼び方です。重要なことは、この症状は疾病単位としてパニック障害にのみ固有のものではなく、しばしばうつ病うつ状態において(当院にいらっしゃる患者さんはこちらの方が多いです)初めて自覚できる症状として現れることが多いのです。パニック障害にしてもうつ状態、うつ病にしてもSSRIがよく効くケースが多いのですが、「どの科でも治療できるから」では駄目です。メンタル系専門医師の診断と治療を受ける必要があります。マスコミがパロキセチンをはじめとしてSSRIに対して警告を発したのも、十分な説明がないまま同系薬剤が使用されて来た背景と関連しています。診断についても治療についても、良心的なメンタル系専門医師でしたら十分な時間を割いてきちんとした説明をします。それがわれわれの職業倫理deontology1)なのですから。

以下のような特徴をもって教科書的には記述されています
# 突然の発来
# 数分から数時間持続(このように長時間持続する場合は症状の悪化、改善を繰り返す)
# 特定の時間帯、特定の場所(例えば、朝出勤途上の電車の中で)に起こることがある
# 症状は
 ■ 動悸
 ■ 発汗
 ■ 振戦(手などの震え)
 ■ 呼吸困難感(多くの場合、呼吸が短く浅くなります2)
 ■ 胸苦しさ、胸痛
 ■ 首のあたりのひきつり、嘔吐
 ■ 嘔気、腹部の諸症状(腹痛、腹部膨満感、下痢しそうな感覚)
 ■ しびれ感、ピリピリ、ビリビリ感
 ■ 悪寒、熱感
 ■ 眩暈感、気が遠くなるような感覚
 ■ 頭痛
 ■ 離人症(現実感の喪失、自分が自分でないような感じ)
 ■ 動転してしまう、気が狂ってしまうのではといった恐怖
 ■ 「死ぬのでは」、「重篤な病気になったのでは」といった恐怖
 ■ 記憶障害、集中困難
 ■ 「周囲の話し声、物音が聞こえない」
 ■ 「他人に話しかけることができなくなる」

# 経過 
いったん発症すると再発しやすい(より正確には繰り返し起こる)。
予期不安(「また起こるのでは」といった怖れ)とこの再発のしやすさは悪のスパイラルとなる。


1) 最初にこの語を用いたのはベンサムです。
2) たいていの場合、結果的に過呼吸になります。症状のいくつかはこの過呼吸の結果起こる場合もあります(健康な人間の血液の pH - どういう訳かこの略語に限ってドイツ語の方が優位です - は7.35から7.45に保たれていますが、過呼吸によって動脈中の酸素分圧が上がりアルカリ血症になるため、つまり7.45あるいはそれ以上になり、諸症状が起こるのです)。

注) 教科書的には広場恐怖Agoraphobia(古代ギリシャの都市国家はアクロポリスとアゴラからなるものでした。しかしヨーロッパ的な伝統的諸都市における広場とそこに集う人々との関係を、単純に古代ギリシャにおけるアゴラと古代ギリシャ人との関係とアナロジカルに捉えることはできないでしょう)を伴うか伴わないかが論じられていますが、そもそも日本にはヨーロッパにあるような広場は存在しません(もちろん単に広い場所は存在しますが)。このヨーロッパの広場が、それがある都市に住む人たち、そこに訪れて来た人たちに歴史的にどのような効果をもたらしてきたか(象徴的な意味をも含めてです)を論じ、此彼の都市といわゆる市民との関係の違いを、このAgoraphobiaという語に即して分析しているものは皆無ではないでしょうか。閉所恐怖Claustrophobia(ラテン語の動詞claudereからclaustrumは「閉ざされた空間」さらには修道僧が僧院で閉ざされた生活を送ることが換喩的に示された意味をもつようになりました)はアナロジーで論じてもかまわないのではないでしょうか。
 公共性(とそこから必然的に導き出される公開性)と閉鎖性との対比がヨーロッパと日本とではまったく異なったものであることを否認して無責任に翻訳して無批判的にそれに従っているととんでもない勘違いを犯すこととなります。

 ということで日本には閉所恐怖を伴うパニック発作は多いですが、「広場恐怖(百歩譲って広場というものを公共の場という意味なのだと屁理屈をこねる論理に従えば、電車のなかのように閉鎖された空間も含まれることとなるでしょう)を伴うパニック発作というICDにおける表現は如何なものでしょうか。多くの患者さんが電車を降りて駅のプラットフォーム(これは公共の場ではないという論理が成り立ちましょうか)で少し楽になって、再度電車に乗るのです。ですから多くは各駅停車症候群 - 通勤電車内で「動悸がして、心臓がおかしくなるのでは」「息苦しい、胸が苦しい、痛い」「発狂するのでは」「吐気がする。もどしてしまうのでは」「下痢、失禁をしてしまうのでは」といった訴えで当医にご来院いただいた方たちに、この点で質問することにしています。「広場恐怖」と「閉所恐怖」とどっちがあなたの症状に結びつきますか?と。大多数の方がそれは「閉所恐怖」だと答えます - なのです。

 小生がいま手にしているDSM-IV-TR(American Psychiatric Association)の433ペ-ジの広場恐怖の診断基準Criteria for Agoraphbiaでは、「コード付けすることができない障害である」Agoraphobia is not a codable disorderと書かれていますが、一方、441ページには300.22とコード化された「パニック障害の既往がない広場恐怖」Agoraphobia Without History of Panic Disorder の記述があります。意味するところは伝わってきますが混乱を生みます。少なくとも論理的logicalでなく、論証的demonstrativeでもありません。そもそも障害とは疾病単位なのか症状なのか症候群なのか、コードと障害との関係は?この分厚い本のどこかにこの問いの答えとなるものが書かれているのでしょうか? 2013年にはDSM-Vが刊行予定となっていますが、編者の方たちの何人がAimez-vous le DSM ? Stuart Kirk et Herb Kutchins, Ed. Empecheurs Penser en Rond, 1998を読んでいるのでしょうか。